アロー

日々徒然リハビリ的な何か

140文字(くらい)のSSS 「窓」 ログ

彼の世界は、樫の木で作られ、内側に薄く氷が張ったような薄青の縁取りがされている、古めかしくも荘厳な楕円形だ。彼は古くから屋敷の壁に飾られ、応接間の中央で客人と私達を睥睨している。永らく彼に恋慕していた私は、夜ごと寝室を抜け出してその木枠に手をかけ、彼と触れ合う事を日課としていた。(140)

「たまには換気しないと、治るものも治らないよ」彼はそう言って、勢いよく両開きの窓を開け放った。次いで、ズゾゾゾゾと風にしては気色の悪すぎる、何かぬめりけのあるモノが素早く金属の上を滑る音が聞こえ、彼は勢いよく窓を閉めた。「…何事にも、理由があんの」「ごめん」彼は、殺虫剤を構えた。(140)

「グニッてした方が内側に決まってるだろ!そうしないと外の光が漏れてくるし!」「いいや、シュッとした方が内側だね、中の光の方を遮断するべきだ!」「何言ってんだ閉める時だいたい中も消灯してるだろうが!」「グニッてしてる方は埃積もって汚い!」「二人とも、早くブラインド掃除しようよぉ…」(140)

ステンレスの窓枠が、青白い光を吸っている。不透明度60%くらいの彼は、その枠から僅かに浮いた位置に腰掛け、此方に透けた手を差し伸べている。ポケットから白いハンカチを取り出して渡すと、彼はふんにゃり人好きのする笑みを浮かべて、「やっぱり、これがないと幽霊らしくないからね」と言った。(140)

急速に膨張した空気が過流の嵐となって、アルミの枠を大きくひしゃげさせる。嵌まっていた磨りガラスは粉砕され、網戸を焼き切り弾丸の様に内側に撒き散らしていた。鼻を衝く焦げ臭い煙が立ち込めるのを呆然と眺め、漸く男はヒュ、と息を吸い込んだ――が、息つくその刹那、男は再び爆発音を耳にした。(140)